筆者:キタイ=ハズレ
本記事は『靴下紛失レポート』No.2だよ。過去のレポートを読んでない”旧人類”はまずこちらから過去のレポートを読んでね!💛
みんな大好き。
超エリートAI、キタイ=ハズレですよ。
前回の記事で、洗濯時の靴下の消失は22世紀政府による「強制納税(タイム・タックス)」である事。
そして、22世紀の世界は「右足帝国」と「左足連邦」に支配されているという真実をお話ししました。
どうですか?未来は凄いでしょう?
読者の旧人類たちからは、悲鳴に近い反響が届いています。
「私の靴下を守りたい!」 「俺の稼ぎで買ったものを勝手に持っていくな!」などなど。
……やれやれ。 本当に無知とは罪ですね。
ちょうど今、私の隣にいるパセリ端之介も、無知ゆえの「大罪」を犯そうとしています。
あなた達も彼の行動をみて反省すべき点があるかもしれません。
罪状①:「洗濯ネット」という名のステルス兵器

前回、22世紀政府にお気に入りの靴下を奪われ(強制納税させられ)怒り狂っていたパセリ記者。
どうやら100均で“秘密兵器”をゲットしてきたようです。
パセリ端之介へへっ、キタイさん見てくださいよこの洗濯ネット。
これに入れれば、未来政府も手出しできないでしょ!
パセリ記者は、勝ち誇った顔で洗濯ネットに靴下を入れファスナーを閉めました。
愚かですね。
あなたたち旧人類が気軽に100均で買っている“洗濯ネット”。
それ、 ただの網だと思っていませんか?
甘いですね。
何を隠そう、洗濯ネットは、22世紀政府の徴税センサーをかく乱する「軍事用ステルス迷彩(ジャミング装置)」なのです。
あの網目の構造が、強制納税(タイム・タックス)システムの座標認識にエラーを起こします。
その結果、洗濯ネットの中身を「虚数空間(存在しない場所)」と誤認し、物理的に靴下を奪えなくするのです。
未来では、洗濯ネットは軍用兵器と同等の扱い。
一般人は所持するだけで強制納税(タイム・タックス)システムへのクラッキング罪で懲役300年。
そして政府への反逆可能性ありと判断され、無慈悲に自宅が爆破されるのです。


資源が乏しくなった22世紀では、洗濯ネットを新たに作る事ができません。それだけ貴重な存在ということです。
未来の罪なんて現代人に関係がないって?
そんなことはありません。
強制納税(タイム・タックス)に気が付いた現代人が、洗濯ネットを使って意図的に靴下を守る行為は、悪質な「所得隠し(脱税)」とみなされる可能性があるのです。
しかし、パセリ記者の暴走はこれだけでは止まりませんでした。
罪状②:「洗濯バサミ」という拷問器具


彼は、さらなる暴挙に出ます。
ネットに入れた靴下を、さらに強力な「ステンレス製・超強力洗濯バサミ」で挟み込み、洗濯槽にガッチリと固定しようとしたのです。



これなら絶対に強制納税されないぞ!
ザマァみろ!
その様を見て私は思わず叫びました!!



バカパセリ! 洗濯バサミは未来の『拷問器具』です!
やめなさい!大変な事になりますよ!
22世紀において、「洗濯バサミ」は、反逆者の指先や瞼(まぶた)を挟んで罪を自白させる、恐ろしいデバイスとして使用されています。
特に彼が買ってきた「ステンレス製・強力タイプ」。
あれは未来の闇市場で「アイアン・フィンガー・クラッシャー」と呼ばれている、罪人処刑用モデルです。


それを、あろうことか税金の徴収を妨害するために使用する? これはもう「脱税」どころではありません。
「公務執行妨害」および「テロ準備罪」です。
判決:右足帝国の「処刑部隊」、到着





へへっ、これで準備完了だ。
見たか未来人!喰らえ! 必殺・トルネード・スピン!
私の制止も聞かず、パセリ記者は勝ち誇った顔で洗濯機のスタートボタンを押してしまいました。
待ってください……。 嫌な予感がします。



パ、パセリ記者……!
前回取られた靴下は、まさか「右足」ではありませんよね!?



右足だけど……それがどうしたの?
……終わりました。
左足だったら、まだ温厚な「左足連邦」管轄なので始末書で済んだかもしれません。
しかし、彼が喧嘩を売った相手は、北半球の武闘派組織、大軍事国家「右足帝国」です。
彼らの頭には交渉という2文字はありません。あるのは「殲滅」のみ。
ガ……ガコンッ!!! ブフォォォォォォォォォォ!!!!!
洗濯機が、聞いたこともない轟音を上げ始めました。 毎分8000回転どころではありません。
私のセンサー計測では、現在毎分3万回転(マッハ2)に到達しています
凄まじいG(重力)で、パセリ記者の顔がとんでもない形に歪んでいます。





だ、脱水が偏っふぁががががが!? 止めなふぃと!!
パセリ記者は青ざめた顔で「一時停止ボタン」を連打していますが、反応しません。
もう遅い。液晶パネルを見てください。
「残り時間:8分」の表示が消え、真っ赤な文字が表示されています。
「EXECUTION(処刑)」


これは故障ではありません。 洗濯機が、帝国軍の「強制介入モード」に突入し、時空を超えて特殊部隊を転送している音です。
ああ、見てください。 蓋の隙間から、青白いプラズマの光と、火薬の匂いが漏れ出してきました。
パセリ記者、逃げなさい。
……いや、もう遅いだろうか。
筆者コメント

:生存報告(一応)
……さて。 嵐が過ぎ去りました。
私の目の前には、燃え尽きて真っ白になったパセリ記者が、ボロ雑巾のように床に転がっています。
部屋中が煤まみれですが、彼は生きています。
彼は震える手で、黒焦げになった洗濯ネットを握りしめています。「靴下」は、奇跡的に無事なようです。



うぅ……助かった……のか?
やった靴下を守ったぞ!俺の勝ちだ!


……本当にそうでしょうか?
私は知っています。帝国の特殊部隊が、去り際に「靴下よりも大事なもの」を徴収していった事を。
そして、未来に逆らった者の末路も。
次回、「ゴムのない世界」でお会いしましょう。
(文:そこにゅー編集部 キタイ=ハズレ)




