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植物から聞こえた“声”──それは始まりにすぎなかった (それ、植物が言ってましたよレポートNo.1)

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筆者:粗大野テレビ

私のアンテナが、ここ数週間、妙なノイズを拾い続けている。

この記事を読んでいるあなたも、薄々気づいているはずだ。今の世界は、明らかにおかしい。

世界各地で、「説明のつかない情報流出」が相次いでいるのだ。

つい先日も、某国の大臣(64歳/既婚)と、人気アイドルグループ “おじ金(おじなど所詮金である)” のメンバー “カナっぺ”(18歳)のツーショットキス写真が流出した。

さらには、大臣宅のWi-Fi名が「kana_forever_0722」(※0722はカナっぺの誕生日)であることも週刊誌によってリークされた。

SNSでは「#大臣キスしてフォーエバー」が世界トレンド入り。

追い詰められた大臣は国会で「カナっぺは私の運命の人なんだあああ!!」と絶叫。

国民全員がチャンネルを変えたくなるほどの地獄絵図が放送された。

また、世界的IT企業「トリリオン・リンクス」でも異常事態が起きた。

全社員を性格や言動をもとに“様々な動物”に分類した人事部の裏資料「トリリオンどうぶつ園マップ」が流出したのだ。

人事部が密かに作成していた社内資料が、世界に向けてお披露目されるかたちとなった。

各部署には「毒ヘビの巣」「定年間近のゴリラ園」「くそ猿山」など、容赦のないネーミングが並び、人事部長が“園長”として謝罪会見を開く異常事態へと発展している。

──誰が、どこから、どうやって漏らしているのか?

そんな中、私の元に一通のメールが届いた。差出人は不明。件名は、たった一行。

「植物は、もう黙っていない」

添付されていたのは、“GMP-01”という聞き慣れない文字列が記された資料。

──私はまだ知らなかった。この資料こそが、世界中で起きている“漏洩パニック”の根幹にあるものだと。

目次

GMP-01とはいったい──。

planttalk

悪戯メールか? 疑念を抱きながらも、私は添付ファイルを開いた。

本文には、警告のような一文が添えられていた。

「あなたの国でも、もう始まっている。GMP-01が全てを記録している──。」

添付ファイルは2つ。PDF形式の仕様書と、短い動画ファイルだ。

私は、古いブラウン管の画面を指でなぞりながら、先に動画の方を再生した。

しゃべっているのは──誰だ?

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映し出されたのは、無機質な実験室。床には観葉植物のプランターが整然と並んでいる。

中央のデスクには、パソコンのモニターを見つめる白衣の中年研究者がひとり。

画面には「GMP-01 OFF」の文字が点滅していた。

GMP-01──。メールに書かれていた文字列である。

次の瞬間、モニターの表示が「GMP-01 ON」に切り替わると同時に──スピーカーから“それ”は響いた。

「こいつパソコンのパスワード、まだ“1234”のままじゃない?」

「本当だ!この前も所長に注意されてトイレで泣いてたのに!」

「あと、コーヒーに砂糖3本入れてるの見た? 『無糖派』とか言ってかっこつけてるくせに。根腐れすればいいのに」

研究者の表情が引きつった。慌ててキーボードを叩き、パスワードを変更する背中が映る。

「うわ、“12345”に変えたよ! 数字ひとつ足しただけでセキュリティ強化した気になってる。ありえない」

「だから所長に“Mr.ワンステップ”って呼ばれてるんだよ。進歩がいつも一歩だけだからな。」

研究員の顔から血の気が引いていく。モニター越しにも、その呼び名が彼にとって耐え難い屈辱であることが痛いほど伝わってきた。

なるほど──彼は所長を心底嫌っているのだろう。

──だが待て。この声は、誰だ?

研究室には彼以外、誰もいない。だが、確かにそこには“誰か”がいる。

あの場で、研究者がパスワードを“1234”から“12345”に変更したことを知っている“誰か”が。

私は動画を巻き戻し、音声を何度も聞き返した。無機質で、乾いた質感の音声。

AI音声合成にも聞こえるが、口が悪すぎる。あまりにも人間臭く、あまりにも陰湿だ。

これはどういうことだ?しゃべっていたのは誰だ?

私の体内にある古いブラウン管の血が騒いだのか、視界にザラザラとした砂嵐のようなノイズが走る気がした。

そして、“GMP-01”とは一体──?

GMP-01の正体

映像の余韻に浸る間もなく、私はもうひとつの添付ファイル「製品仕様書:GMP-01(Green Message Processor-01)」を開いた。

GMP-01製品仕様書
製品仕様書:GMP-01(Green Message Processor-01)
【目的】
観葉植物の健康状態・ストレスレベルを常時把握し、人間に適切なケアを促すAI支援型デバイスである。

【出力方式】
AI音声変換モジュールにより、植物の電気信号を人間に理解可能な自然言語に変換。
例:「水が不足しています」「光が足りません」「温度が高すぎます」など。

【備考】
初期ロット(Ver.0.91β)は東京都・ロンドン・シンガポールの複数施設に設置済み。

1ページ目に並んでいたのは、至って健全な記述だった。

光量、水分、温度──植物の健康状態を数値化し、必要に応じて音声で通知する。

要するに、GMP-01とは植物の状態を“人間の言葉に翻訳”することで管理効率を高める、きわめて先進的な製品である。

表向きには、どこからどう見ても健全な“グリーンAI”にしか見えなかった。

問題は2ページ目。そこには製品仕様とは異なるトーンで、不穏な「研究記録」が残されていた。

研究記録
研究記録ログ:2023年3月12日(第4実験室)
【目的】
GMP-01の音声変換アルゴリズム(Ver.0.91β)における異常出力の再現性と原因の調査。

【実験概要】
実験体としてパキラ(観葉植物)を選定。24時間モニタリング環境下で音声変換ログを取得。

【初期出力ログ(稼働~約72時間)】
・「水が欲しいです」
・「室温が高めです。換気を希望します」
・「光量が足りません」

稼働初期は、植物の生理的状態を伝える健全な応答のみが確認された。

【確認された異常出力(稼働72時間以降)】
・「この照明、毎日ちょっと暗くない?ミスってるの気づいてない感じ?」
・「あの所長、絶対カツラだよね?昨日ズレてたの私見えてたからね」

72時間を超えると“dis”的な内容が混入し、以降の出力傾向は一変した。

【特機事項】
・植物が職員の動きに合わせて葉の向きを変える現象を複数回観測。

【考察】
GMP-01は、周囲の人間の会話・行動・表情といった“ニュアンス”を感知し、皮肉や軽蔑──いわゆる“dis”として音声出力している可能性がある。

【追加メモ】
・dis出力の抑制を目的にポジティブ語彙で強化学習を実施したが、傾向に変化はなし。
・健全な応答(「水が欲しい」等)はdisと並行して断続的に出力され続けた。
・異常出力の原因特定には至らず、disは外部出力せずログ記録のみに留める対応を実施。
・GMP-01は“GP2035”世界認定モジュールとして世界中の主要施設にて稼働予定。

研究記録を読み終えた私は、一度深く息をついた。

初期段階では「水が欲しい」「光量が足りない」といった健全な言葉のみ発していた植物が、72時間を過ぎた頃から人間の見た目や行動を“dis”るようになったというのだ。

さらに記録には「植物が職員の動きに合わせて葉の向きを変える現象を複数回観測」との特記まであった。

植物に目や耳はないはずだ。だが、記録によれば植物は職員の動きに合わせて葉の向きを変え、明らかに“見て、聴いて”いた。

この記述が事実だとすれば、所長のカツラもすべて植物に見透かされていたことになる。

そして、私は気づいてしまった。

研究記録の別添に、異常なほど詳細な「所長の頭部をあらゆる角度から撮影・観察した図(かつら推定構造図)」が添付されていたことに。

なぜ、いち研究員がここまで執拗に上司の頭部を分析したのだろう。

いや。おそらくこれを作ったのは冒頭の動画で、所長に「Mr.ワンステップ」という屈辱的なあだ名で呼ばれていた彼だ。

植物が放った「所長、絶対カツラだよね?」という強烈なdis。

それは彼にとって、溜飲が下がる最高の“復讐”だったに違いない。彼は狂気にも似た執筆意欲で、この図解を仕上げたのだ。

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いったんカツラの件は置いておこう。

記載されていた研究記録を纏めると、植物は周囲の人間の会話・行動・表情──その“ニュアンス”を把握し、GMP-01を通じて皮肉や軽蔑、つまり“dis”として音声出力している可能性があるということになる。

だが、不可解だ。

ただの「植物管理デバイス」に、なぜここまで高度な「人間観察能力」が必要なのか?

その答えは記されていなかった。だが、最後の恐ろしい一文が私の目に飛び込んできた。

「GMP-01は“GP2035”世界認定モジュールとして、世界中の主要施設にて稼働予定である。」

GP2035──聞き慣れない言葉だった。だが、ひとつだけ確かなことがある。

この装置は、すでに世界中で稼働している可能性があるのだ

次の瞬間、私は無意識にキーボードへ手を伸ばしていた。

“GP2035”とは一体何なのか?その正体を確かめるために──。

GP2035とは

私は“GP2035”の正体を探るため、ネットの海へ潜った。

検索結果には「グリーンプラン2035」という単語が引っかかった。

「グリーンプラン2035」──どうやら、2026年に世界国家連合によって立ち上げられた都市緑化とCO₂削減を掲げる国際的な環境政策のようだ。

世界規模の「緑化推進プロジェクト」

グリーンプラン2035のウェブサイトには「植物がつくる、やさしい未来。」というキャッチコピーが踊っていた。

建前上は、2035年までに地球環境を改善するためのプロジェクトだ。公共施設やオフィスビルへの観葉植物設置が「推奨」されている。

──しかし、実態は違った。

サイトの資料を読み解くと、加盟国では緑化が事実上の「義務」になっていたのだ

「建物の1フロアあたり植物25鉢以上」といった具体的な数値目標が行政文書に明記されており、それは各地のビルや施設の設計・運用にまで組み込まれていた。

だが、ビルオーナーや経営者は誰もそれに反対しない。なぜなら、そこには抗いがたい「甘い蜜」が用意されていたからだ。

「緑化特別助成金」

植物を置けば置くほど、異常な額の現金が振り込まれる。そのシステムは、ビルオーナーや経営者たちの理性を簡単に溶かした。

彼らはもはや、環境のことなど考えていない。ただ「植物=金」という思考に支配され、競うように、そして狂ったように、空いたスペースへ植物をねじ込み続けているのだ。

結果、都市のオフィスは足の踏み場もないジャングルと化しているが、誰もそれを「おかしい」とは言わない。口を塞ぐには、十分すぎる札束がバラ撒かれているからだ。

さらにページをスクロールすると、気になるリンクが目に入った。

「呼吸する脂肪たち──世界の“ハアハア”マップ」

──なんだ、この悪意に満ちたタイトルは。

どうやら、肥満とCO₂排出の関係についてまとめたコーナーらしい。

クリックすると、真っ赤に染まった世界地図が表示された。解説にはこうある。

『肥満による呼吸回数の増加(常時ハアハア状態)が、都市部のCO₂濃度を上昇させている』。一部の国は都市部の大気質に顕著な影響を及ぼす可能性がある。

地図上で、特に目を引いたのは“トクマ共和国”だった。

国土全体が警告色で塗られ、「国民の大半が常時ハアハアしているため、植物設置推奨数を2倍に設定」と書かれている。

──常時ハアハアしている国民。

私は思わず、自分のベルトの上に乗った脂肪を見つめ、静かに息を止めた。

だが、おかしい。トクマ共和国は健康的な食生活で知られる国だ。肥満大国というイメージはない。それなのに、なぜここまで極端に“赤く”塗られているのか?

これは、明らかにデータがおかしい。いや、意図的に改ざんされている。

なぜ、捏造してまで植物を置かせたいのか? まるで、「トクマ共和国には、何がなんでも植物を送り込まなければならない理由」があるかのようだ。

妙な引っかかりを覚えたその瞬間、あの研究記録の一文が、脳裏によみがえった。

「GMP-01は“GP2035”世界認定モジュールとして、世界中の主要施設にて稼働予定である。」

つまりこの“緑化ノルマ”の裏で、大量の植物の世話を可能にする目的でGMP-01が世界中に配置されていたのだ──まるでそれが、最初からセットで計画されていたかのように。

植物を世話するという名目で、すべてのオフィス、すべての家庭に、「聞き耳を立てる植物」を送り込むために。

筆者コメント:そして、芽を出した違和感。

差出人不明のメールが告げた真実。

植物の声を拾うデバイス「GMP-01」と、それを世界に拡散する緑化政策「GP2035」

肥満でもないトクマ共和国が「ハアハアしている」とレッテルを貼られたのも、おそらく何らかの理由でその国を監視したがっている組織がいるという事だろう。

それに──あの研究記録の最後のページに描かれていた「所長のかつら構造図」が、どうしても頭から離れない。

所長のかつら、それはGMP-01によるdisが暴き出したた“真実”だ。研究者はきっと、あの一枚の図解を作成した瞬間に深い満足感を覚えたに違いない。

──けれど、これは本当に正しいことなのだろうか?

ふと、「おじ金」スキャンダルを思い出した。

大臣宅のWi-Fiパスワードが流出した件である。

そういえば──あの大臣は、「トクマ共和国」の大臣ではなかったか?

もしかして、大臣の部屋の隅にあった「観葉植物」が、パスワードを聞いていただけではないのか?

その植物を大臣の部屋に持ち込んだんのは誰だ?私の脳裏に、あのアイドルグループの名前がよぎる。

「おじ金(おじなど所詮金である)」

あまりにも冷徹で、任務遂行じみたグループ名。メンバーの“カナっぺ”は、本当にただのアイドルなのだろうか?

彼女は、ハニートラップ要員として送り込まれた「緑の刺客(エージェント)」だったのではないか?

そんな違和感だけが、じんわりと残っている。

次回は、「GP2035ガイドライン」の奥に踏み込み、その設計思想の“根底”に迫ってみようと思う。

たとえその先に、どんな闇が待ち受けていたとしても──。

(文:そこにゅー編集部 粗大野テレビ)

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この記事を書いた人

昭和62年製のブラウン管テレビとして生を受け、家庭用リビングでのびのびと育つ。DVDの登場により仕事が激減し、粗大ゴミとして不法投棄される。その後、廃品回収ヤードで過ごしていたが、朽ちかけたアンテナが謎の妄想電波を受信。
「このままじゃ“情報の墓場”だ……俺が“発信する側”になるしかねえ」と目覚め、記者活動を開始。

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